【現役教員が語る】小学校教員の魅力とやりがい|知られざる5つの素晴らしさ

近年、教員という職業は働き方改革の文脈で多くの課題が指摘され、必ずしも人気の高い職業とは言えない状況にあります。
長時間労働や残業代の未払い問題、保護者対応の難しさなど、メディアではネガティブな側面がクローズアップされることが多いのが現状です。
しかし、私が実際に小学校教員として勤務する中で感じるのは、世間で語られていない数多くの魅力やメリットがあるということです。
今回は、小学校教員の本当の魅力とやりがいについて、現場の声としてお伝えします。
これから教員を目指す方や、教育に関心のある方に向けて、この仕事の素晴らしさをご紹介します。
自分の個性や特技を最大限に活かせる職業
多様な才能が花開く教育現場

就職活動において多くの人が「自分の個性を活かせる仕事がしたい」と考えます。
しかし、実際のビジネス現場では、組織の一員として業務をこなすことが求められ、個人の趣味や特技を発揮できる場面は限られているのが実情ではないでしょうか。
小学校教員の最大の魅力の一つは、自分の個性や特技を存分に活かせる点にあります。
教育現場では、様々な場面で教員一人ひとりの多様な才能が必要とされ、それが子どもたちの学びに直結します。
スポーツが得意な教員の活躍シーン

体育が得意な教員は、日々の体育の授業はもちろん、運動会や球技大会などの学校行事で大いに活躍します。子どもたちに正しいフォームを見せたり、効果的な練習方法を教えたりすることで、運動の楽しさを伝えることができます。
休み時間に子供と鬼ごっこをするだけでその先生は子供達にとってヒーローであり、楽しい遊び相手になります。
例えば、私のある同僚は体操の選手で、バク転や鉄棒を軽々とこなします。私の担当している授業にゲスト出演として来てもらい、技を披露してもらうと子供達は大いに盛り上がります。
「先生、すごい!」という子どもたちの素直な感嘆の声を聞くとき、自分の特技が教育に活きていることを実感することができます。
音楽の才能を教育に活かす喜び

音楽が得意な教員も、様々な場面で活躍できます。音楽の授業や合唱指導、学習発表会や音楽会などの行事では、教員の音楽的センスや技術が直接子どもたちの音楽体験の質を左右します。
最近では教科担任制の導入も広がり、音楽専科として活躍できる機会も増えています。専門性を活かせる環境が整いつつあるのです。
特筆すべきは、プロレベルの技術が必要ないという点です。
子どもたちにとって大切なのは、教員の「音楽を楽しむ心」や「表現する喜び」を感じることです。ピアノが上手でなくても、ギターやウクレレなどの楽器を少し弾けるだけで、子どもたちの目は輝きます。
ある先生は趣味のバイオリンを音楽の授業で披露し、子どもたちに生の演奏を聴かせています。CDやYouTubeの音源とは違う、目の前で生まれる音楽の感動を子どもたちに伝えられることは、かけがえのない経験です。
音楽の授業が子どもたちの楽しみになり、「先生、今日は何を弾いてくれるの?」と期待に胸を膨らませる姿を見るとき、教員をしていて良かったと実感するはずです。
デジタルスキルが光るGIGAスクール時代

現在、GIGAスクール構想によって小学校でも1人1台端末の時代が到来し、ICTを活用した教育が急速に進んでいます。
こうした中、パソコンやデジタル機器の操作が得意な教員の存在価値は非常に高まっています。
学校現場ではまだITリテラシーの差が大きく、基本的なパソコンスキルや簡単なプログラミング知識があるだけで、頼られる存在になれます。
企業では当たり前のExcelスキルやプレゼンテーション能力が、学校では「専門知識」として重宝されることも珍しくありません。
私もデジタル教材の研修を担当し、ベテラン教員にタブレット活用法を教える場面が増えています。
同僚から感謝されることも数多くあり、自分のスキルが学校全体の教育力向上に貢献していると感じられる瞬間はやりがいを感じます。
図工・家庭科・理科実験など多彩な才能の発揮場所
他にも、絵を描くのが得意な教員は図工の授業で、料理が得意な教員は家庭科で、工作や手芸が得意な教員は様々な制作活動で、それぞれの個性を発揮できます。
理科の実験が好きな教員は、子どもたちの知的好奇心を刺激する魅力的な実験授業を展開できるでしょう。
また、教科指導以外にもクラブ活動で力を発揮する教員もいます。
ダンスやプログラミングの技術を生かし、子供たちの教育活動をより楽しいものにしている教員が多くいます。
このように、教員の多様な趣味や特技が、子どもたちの多様な学びにつながっているのです。
一般企業では評価されにくい「変わった趣味」や「マイナーな特技」も、学校では貴重な教育資源として活かせることが多いのです。
自分の個性が子どもたちの成長に直結する喜びは、小学校教員ならではの醍醐味と言えるでしょう。
教材研究が自分自身の生活を豊かにする
「趣味と仕事の境界線」がなくなる贅沢

小学校教員の素晴らしい特徴の一つに、教材研究と自分の生活が密接につながっていることが挙げられます。一般的な仕事では、仕事と私生活は別物であることが多いですが、教員は違います。
音楽を聴く、本を読む、美術館に行く、旅行する、スポーツをする―これらの活動が全て「教材研究」として仕事に直結するのです。
「これは授業で使える!」という視点で日常を過ごすことで、仕事のためでありながら、自分自身の人生も豊かになっていきます。
私自身、旅行先で見た沖縄の古い建造物が社会科の授業のネタになったり、読んだ絵本が国語の導入に活用できたりと、日常の経験が教育活動に活きる場面を数多く経験しています。
教科書やPCで見ることは可能ではありますが、生の教材や体験談は子供達の関心を大きく惹きつけます。
幅広い教養が身につく全教科指導

小学校教員は基本的に全教科を教えるため、様々な分野の知識や教養が必要とされます。
これは負担に感じることもありますが、見方を変えれば自分自身の知識や経験が広がるチャンスでもあります。
例えば、理科の授業のために宇宙や生物について調べることで、自分自身も新たな発見や学びがあります。社会科の地理の授業準備で日本各地の特産品や文化を調べるうちに、自分が行ってみたい場所が増えていくこともあるでしょう。
この「学び続ける姿勢」は、40年、50年と長く教員を続けることで、自分自身の人生を深め、豊かにしてくれます。
常に新しい知識に触れ、それを子どもたちに伝えるという循環が、教員としての成長だけでなく、人間としての成長にもつながるのです。
様々な経験が教育に活きる
趣味や特技だけでなく、日常生活での何気ない経験も教育活動に活かせることが多いです。
家庭菜園で育てた野菜を理科の教材にしたり、料理の失敗談を家庭科で共有したり、子育ての経験を生活指導に活かしたりと、自分の人生経験がそのまま教育のリソースになります。
また、動画編集やプレゼンテーションなど、自己啓発で学んだスキルも教育現場で活かせるため、学びのモチベーションが高まります。
「これを覚えたら授業で使える」という実用的な目的があることで、新しいことに挑戦する意欲が自然と湧いてくるのです。
企業や地域との連携授業も増えており、様々な職業の方々と交流する機会も豊富です。
外部講師を招いた特別授業の企画・運営を通じて、教員自身も多様な知見を得ることができ、視野が広がります。
長期休暇を活用した充実したプライベートライフ
計画的に取れる長期休暇のメリット

教員の特権とも言えるのが、夏休み・冬休み・春休みという長期休暇の存在です。
もちろん完全に休みというわけではなく、研修や授業準備などの業務はありますが、子どもたちが登校しない分、通常期と比べて時間の融通が利きやすいのは事実です。
特に夏休みは、工夫次第でまとまった休暇を取ることが可能です。
研修や会議の日程を把握し、集中的に業務をこなすことで、1~2週間以上のまとまった休みを確保している教員も少なくありません。
近年は働き方改革の一環として有給休暇の取得も推進されており、「休むことは悪いこと」という風潮も徐々に変わりつつあります。
長期休暇と有給休暇を組み合わせることで、充実した休暇計画を立てることができるのです。
旅行や自己研鑽の時間を確保できる
長期休暇の大きな魅力は、自分自身の成長のための時間を確保できることです。
海外旅行や国内旅行に行く、資格取得のための勉強をする、趣味に没頭する―こうした時間は、教員としての視野を広げ、人間性を豊かにしてくれます。
私の同僚の中には、毎年夏休みに海外旅行に行き、その経験を社会科や外国語の授業に活かしている先生がいます。
また、別の先生はツーリングで様々な場所の写真を撮影し、その地域の魅力について授業と絡めながら紹介しています。
このように、休暇中の経験が直接授業に活かせるのは教員の大きな特権です。
休暇が単なる「休息」ではなく、「次につながる充電期間」となり、仕事と私生活の好循環を生み出してくれるのです。
家族との時間の確保

子育て中の教員にとっては、子どもの長期休暇と自分の休暇が重なりやすいことも大きなメリットです。
子どもの夏休みに親も休みが取れるため、家族旅行や思い出づくりの時間を確保しやすくなります。
一般企業では、子どもの長期休暇中に休暇を取ることが難しく、共働き世帯では夏休みの子どもの預け先に苦労することも多いですが、教員は比較的この問題が軽減されます。
これは子育てと仕事の両立という観点から、非常に大きなアドバンテージと言えるでしょう。
人間的成長と多様なスキル習得の場
「五者たれ」が示す教員に必要な多様なスキル
教師は「五者たれ」という言葉があります。これは「学者・医者・易者・役者・芸者」の要素を兼ね備えることの重要性を示す言葉です。この言葉が示すように、教員には様々な能力や資質が求められます。
- 学者:教科の専門知識や教育理論について深い理解を持つこと
- 医者:子どもの健康状態を観察し、適切に対応する能力
- 易者:子どもの心を読み取り、将来を見通す洞察力
- 役者:授業を魅力的に展開するパフォーマンス力
- 芸者:子どもや保護者との円滑なコミュニケーション能力
これらの多様な役割を担うことは、時に負担に感じることもありますが、長い目で見れば自分自身の人間的成長につながります。様々な経験を通じて培われたスキルは、教員生活だけでなく、人生全般において役立つものばかりです。
医療・健康知識の習得
学校現場では、怪我や体調不良の応急処置、アレルギー対応、感染症対策など、医療や健康に関する基礎知識が必要とされます。
保健室の先生と連携しながら対応することで、自然と健康管理の知識が身につきます。
この知識は自分自身や家族の健康管理にも活かせることが多く、「学校で子どもの対応を学んだおかげで、自分の子どもの体調変化にも気づきやすくなった」という声もよく聞きます。
感染症の流行りも学校の欠席状況から気付くことができます。
カウンセリングスキルの向上

子どもたちの話に耳を傾け、心の問題に寄り添う経験は、自然とカウンセリングスキルを高めていきます。
不登校の子どもへの対応、いじめ問題の解決、家庭環境に課題を抱える子どもへのサポートなど、様々な場面で傾聴力や共感力が試されます。
近年は教員研修でもカウンセリング技法が取り入れられることが増え、専門的なスキルを学ぶ機会も増えています。「アクティブリスニング」や「アサーティブコミュニケーション」など、対人関係で役立つ技術を習得できるのも魅力の一つです。
これらのスキルは保護者対応や同僚との関係構築にも活かせるだけでなく、家庭での子育てや友人関係など、私生活のあらゆる場面で役立ちます。
エンターテイナーとしての表現力

授業を楽しく、分かりやすく進めるためには、一種のエンターテイナー的な資質も求められます。
声の大きさや抑揚、表情の豊かさ、間の取り方など、子どもたちの興味を引くためのパフォーマンススキルが自然と身についていきます。
私が尊敬する先輩教員は、常にネタ帳を持ち歩き、いつでも面白い話ができるように準備しています。
授業の導入で少し大げさな演技をしたり、教科書の内容を劇仕立てで再現したりすることで、子どもたちの学習意欲を高める工夫をしています。
こうした表現力は、会議でのプレゼンテーションや地域の集まりでのスピーチなど、様々な場面で役立ちます。
「やっぱり先生だから話が上手いね」と言われる教員は少なくはないと思います。
かけがえのないやりがいと感動体験
子どもの成長を間近で見守る喜び

小学校教員の最大の魅力は、何と言っても子どもたちの成長を間近で見守り、その喜びを共有できることでしょう。
入学時はまだ幼さの残る子どもたちが、日々の学校生活の中で少しずつたくましく成長していく姿を見守れることは、この仕事ならではの特権です。
- 1年生で「あいうえお」から始めた子どもが、6年生になって立派な卒業論文を書けるようになる。
- 計算もままならなかった子どもが、算数の難問に挑戦するようになる。
- 人前で話すのが苦手だった子どもが、堂々とスピーチができるようになる。
そうした成長の過程に寄り添い、時に支え、見守ることができるのは、教員の大きなやりがいです。
特に担任として1年間じっくり関わることで、その子の小さな変化や成長に気づくことができます。
「先生、見て!できるようになったよ!」という子どもの満面の笑顔に、疲れも吹き飛ぶ瞬間が何度もあります。
卒業生との再会がもたらす感動
教員を長く続けていると、卒業生が成長して再会する機会も増えてきます。中学生、高校生、大学生、社会人と、様々な姿で母校を訪れてくれる卒業生との再会は、教員冥利に尽きる瞬間です。
- 「先生の授業が好きだった」
- 「先生の言葉で進路が決まった」
- 「先生のようになりたいと思った」
そんな言葉をもらえたときの喜びは、どんな高給や社会的地位にも代えがたいものがあります。
中には教員を目指す卒業生や、自分の子どもを連れて訪ねてきてくれる卒業生もいて、時間の流れと共に関係性が深まっていくのも教員ならではの喜びです。
努力と成果の直結感

小学校教員の魅力の一つに、自分の努力がダイレクトに結果として現れやすい点が挙げられます。
熱心に教材研究をして工夫を凝らした授業をすれば、子どもたちの理解度や意欲が目に見えて変わります。
例えば、算数が苦手な子どものために個別プリントを作成したら、その子が「わかった!」と目を輝かせる。読書が好きになってほしいと思って本の紹介をしたら、クラスで読書熱が高まる。
そうした直接的な反応が日々感じられるのは、教員の大きなモチベーションになります。
教育という仕事は、日々の小さな成功体験の積み重ねが実感できる素晴らしい職業なのです。
おわりに:「普通の人」こそ輝ける教育現場
教員という仕事は、時に「聖職者」のように完璧な人間であることを求められるようなイメージがあります。
しかし実際には、完璧な人間である必要はありません。
むしろ、どこか弱さや欠点を持ち、それでも前向きに成長しようとする「普通の人」こそ、子どもたちの共感を得られる存在になれるのです。
子どもたちは、教員の完璧な姿より、失敗しても諦めない姿、悩みながらも前に進む姿から多くのことを学びます。
自分も悩みながら日々成長していく過程を子どもたちと共有できるのは、教員という仕事の醍醐味と言えるでしょう。
小学校教員の魅力は、決して給与や労働時間だけでは測れません。
子どもたちとの出会いと別れ、日々の感動と発見、そして自分自身も共に成長できる喜び―これらがこの仕事の本質的な価値なのです。
長時間労働や様々な課題があることは確かですが、それでも多くの教員が情熱を持って教壇に立ち続けられるのは、この仕事ならではの魅力とやりがいがあるからです。
あなたも、子どもたちの未来を共に創る素晴らしい旅に出てみませんか?
教員を目指す方へ、この記事が少しでも参考になれば幸いです。