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【現役教員が解説】小学校のいじめ対応:発覚から解決までの道のり

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「いじめられた」と子どもが訴えた時、学校は本当に適切な対応をしてくれるのか?

いじめが発覚してから、学校がどのような手順で事実確認を行い、どのような指導や支援をしていくのか。

この記事では、学校の対応の裏側を教員の立場から具体的に解説します。

学校の対応を知ることで、いじめ問題への不安を解消し、より建設的に学校と連携することに役立ててほしいと思います。

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いじめの発覚と報告

いじめ事案は、主に次の3つの方法で発覚します。

子供からの訴え

子供自身からの直接の訴えは、

  • ○○君に嫌なことを言われた
  • ○○ちゃんににらまれた

など、比較的軽度な事案が多い傾向にあります。

深刻なケースになればなるほど、子どもは自分から話すことが難しくなる傾向があります。

アンケート調査での発覚

学校では定期的なアンケート調査を実施しており、「クラスで困っていることはありますか?」といった質問を通じて、いじめの兆候を見つけることがあります。

文章で書くことで、直接言えない悩みを伝えるきっかけになっています。

保護者からの連絡

  • 最近、子どもが学校に行きたがらない
  • 友達から嫌なことをされていると言っている

お子さんの変化に気づいた保護者からの情報提供は、いじめの可能性を示す重要なサインとして真剣に受け止めています。

被害児童への聞き取り調査

学校では、いじめの報告を受けたら、まず被害児童から詳しく話を聞きます。

保護者から詳細を聞き取っていた場合でも、被害児童に直接聞くことが基本です。

「本人の言葉」を教員が聞いたという事実が大切です。

担任や生徒指導の教員が、プライバシーに配慮した場所(相談室や空き教室など)で、子どもが安心して話せる環境を整えます。

大前提としていじめの真相究明は不可能

子供の発言だけで、その当時の状況を確定することはできません。目撃者に証言をもらってもそれが正しいとも限らないです。

本当に真相究明をするには、学校中に監視カメラを設置し、いじめの瞬間を確認するしかありません。

学校は真相を究明するのではなく、それぞれの児童が話した事実を確認することに努めます。

暴力を振るわれた事案の場合

○○君に叩かれました。

「叩かれた」という情報だけでは当時の状況が分かりづらいです。

  • いつ、どこで、誰が、どのように叩いたのか
  • 叩いたのはどちらの手で、どこを叩いたのか
  • グーで叩いたのか、パーで叩いたのか
  • どのくらいの頻度で起きているのか
  • 目撃者はいたのか
  • これまでに同じようなことがあったのか

警察の取り調べのようにかなり詳細まで丁寧に聞き取ります。

ここで大切にしているのは子どもの言葉を「そのまま」記録することです。

大人の解釈で言葉を変えたり要約したりすると、後々トラブルを引き起こし問題の解決が遠ざかってしまうことになりえます。

学校内での情報共有と対応方針の決定

担任だけでなく、学年主任、生徒指導担当、管理職(校長・教頭)など、学校のいじめ対策チームで情報を共有します。

いじめの内容や深刻度を評価し、保護者への連絡方法、加害児童への聞き取り方法、今後の指導方針について話し合います。

必要に応じて聞き取りの補習体制を確認

聞き取りを行うことが必要になった場合、手の空いている教員が聞き取りに加わったり、教室に代わりに入ったりできるよう手配を始めます。

加害児童が複数名にわたる場合、同時に聞き取りを行うためさらに人数を集める等、クラスや学年を超えての職員を巻き込んだ組織的対応を行っていきます。

被害児童の保護者への連絡

連絡帳、もしくは電話で保護者に聞き取った内容と今後の方針について連絡を行います。

伝える内容が多くなるため、原則電話での連絡が多いです。

必要に応じて直接面談することもあります。

判明している事実関係、今後の学校の対応方針、加害児童への聞き取りを行う予定であることなどを伝えます。

加害児童への聞き取り調査

保護者との連絡が終わると、いじめを行ったとされる児童からも話を聞きます。

指導よりも事実確認を優先

この段階では「犯人扱い」はせず、あくまで事実確認を目的とします。

「〇〇さんとの間で何かあったの?」等と、中立的な聞き方をし、加害児童の言い分にも耳を傾けます。

指導よりも事実確認を優先するのは、加害児童とされる子どもにも言い分や背景があることが多いからです。

書類上はいじめの「加害者」ですが、実際に話を聞いてみると、むしろ「被害者」だと感じることも珍しくありません。

被害児童の言い分と食い違う点、その当時の状況について詳しく確認します。

指導と共感のバランス

加害児童であっても寄り添って話を聞くことは必要です。

毅然とした態度で指導することは大切ですが、最初から毅然と厳格な態度で臨むと、子供は事実を隠してしまいがちです。

いじめの経緯を確認し、加害児童なりの理由を確認し、その気持ちに寄り添い共感を示します。

共感の声掛け例
  • 嫌なことをされたから(加害行為)をしちゃったんだね。
  • 相手を(加害行為)したくなるくらい嫌なことだったんだね。
  • イライラしてどうすればいいか分からなくなっちゃって(加害行為)したのかな。
  • (加害行為)するつもりはなかったんだね。
  • ○○さんは真面目だから、○○君のやっていることが許せなかったんだね。
  • 色々積み重なってお互い嫌な気持ちになってしまったんだね。
指導例
  • でも、叩いてしまったら相手はどんな気持ちになるかな?
  • 叩くことはよくないことだったね。
  • その時はどうしたらよかったと思う?

教員は、児童の味方でもあり、指導者でもあります。

子供相手に正論を言っても、相手は心を開いて話をしてくれません。

子供がウソをついていても、教員が寄り添って共感をしていると、ぽろっと本音を話してくれることもあります。

共感と指導のバランスが大切です。

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再度の情報共有と対応方針の具体化

校内での情報共有と対応方針の決定

加害児童への聞き取り後、再度いじめ対策チームで情報を共有します。

被害児童と加害児童の話の食い違いや一致点を確認し、事実関係を整理した上で、いじめの全体像を把握し、今後の具体的な指導方針を決定します。

双方の保護者への連絡

被害・加害両方の保護者に対して、聞き取った内容と今後の対応方針を伝えます。

子どもがどのように話したか(「〇〇君はこのように話していました」)という形で伝え、事実と断定するのではなく、子どもたちの認識を伝えることに重点を置きます。

その上で、今後の指導方針や学校の対応について説明します。

状況に応じた指導と対応

聞き取りの結果に基づき、状況に応じた指導を行います。一般的には以下のようなパターンが考えられます。

加害児童がいじめを認め、被害児童に落ち度がない場合

加害児童への反省を促す指導を行い、被害児童の希望があれば謝罪の場を設けます。

ただし、謝罪を無理強いすることはありません。

双方の保護者に結果を報告し、今後の見守り方についても伝えます。

加害児童がいじめを認め、被害児童にも問題があった場合

双方に対して、それぞれの行動について考えさせる指導を行います。

互いの気持ちを理解させ、必要に応じて双方から謝罪する場を設けることもあります。

ただし、感情的になりやすい状況なので、謝罪の場を設ける際には慎重に判断します。

双方が納得しない状況で謝罪は行いません。

両者が納得しないまま、謝罪を行うと、自分の過ちを認めた方が損になることもあります。

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加害児童がいじめを認めない場合

事実関係の追及よりも、「相手が嫌な気持ちになった、相手は~してほしくなかったと考えている」という事実を伝えることを重視します。

「もしあなたがそのような行動をされたらどう感じるか」を考えさせ、今後同じようなことがないよう約束をする方向で指導します。

被害者目線では白黒つけたくなりますが、無理やり進めてしまうと長期的に見て逆効果です。

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白でもなく、黒でもないグレーな状態で、保護者、担任、教頭、校長様々な大人が注意深く見ているという事実を伝えることが今後のいじめ行為をけん制することに繋がります。

もし問題を徹底的に調査するのであれば、警察等の外部機関に依頼することとなります。

安全確保と心のケア

いじめ問題の解決には、被害児童の安全確保と心のケアが最優先です。

また、教室での居場所づくりや友人関係の支援も大切にします。

加害児童に対しては、いじめ行為の問題点を理解させ、相手の気持ちを考える力を育てる指導を行います。適切な人間関係の築き方について、根気強く教えていきます。

継続的な支援とフォローアップ

いじめ問題は一度の指導で終わりではありません。学校では継続的な支援を行います。

学級では、必要に応じた席替えやグループ活動の配慮、定期的な声かけや観察、いじめを許さない学級風土づくりに取り組みます。

学校全体でも教職員間での情報共有、次年度のクラス編成での配慮等を行います。

外部機関との連携

深刻ないじめの場合は、学校だけでなく外部機関と連携して対応します。

被害児童に対しては、安心して学校生活を送れるよう見守りを強化し、必要に応じてスクールカウンセラーによる心のケアを行います。

教育委員会への報告と支援要請、スクールソーシャルワーカーの活用、必要に応じて警察や児童相談所との連携も図ります。

まとめ

子供の様子に変化を感じたら、遠慮なく学校に相談してください。

「うちの子に限って」と思わず、冷静に子どもの話に耳を傾けることが重要です。

学校からの連絡には迅速に対応し、情報を共有していただくことで、より効果的な支援が可能になります。

一方で、いじめは白黒はっきり付けられるものでは無いということにも注意が必要です。

表面上の「解決」を目指すのではなく、子供達が安心して学校に登校することができるよう長期的な視点で対応していくことを心掛けることが大切です。

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小・中・高の教員免許を持っている小学校教員の「ぴの」といいます。 閉鎖された学校現場をなるべく多くの人に知ってもらいたいという思いでサイトを運営し始めました。教員や保護者の皆さんに役立つブログを作成していきます。よろしくお願いします!
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