【道徳の授業開き】楽しく、学習のねらいを伝える授業開きを2つ紹介
道徳の授業開きどうしようかなぁ・・・
と悩んでいませんか?
新しい担任が決まり、子供たちは先生がどんな人物なのか不安と期待でいっぱいです。そんな中迎える1時間目の授業が教師の印象を大きく左右します。授業開きを成功させることができれば、この先生が担任で良かった!と安心させることができます。
道徳の授業を苦手とする先生は少なくないはずです。私もその中の1人です。。普通に教科書の内容に沿った授業をすることも少なくありませんでした。
しかし、「こんな道徳の授業をしたい」という考えが生まれてからは、それを実現するための授業開きを毎年するようにしています。低学年から高学年までどの学年でも盛り上がる授業をすることができました。「楽しかった」と子供達にも好評で、今では毎年、道徳の授業開きをするのは楽しみにしていることの一つです。
この記事では、誰でもできる道徳の授業開きを説明します。特別な準備などは必要ありません。
この記事を読めば、楽しく、学びのある道徳の授業開きができます。ぜひ、読んでみてください。
みんなで絵を描こう
まず一つ目に紹介するのは「みんなで絵を描こう」です。
道徳なのに絵を描くと言われると驚くかもしれません。子供達も最初の道徳の授業がお絵描きだと知ると分かりやすく驚きます。この斬新さが授業開きでは大切です。「この先生は何か違うぞ」という他の先生との違いを生み出すことができます。
授業開きの概要
対象学年 | 小学校中学年以上 |
所要時間 | 20~30分程度 |
形態 | 4人グループ |
準備物 | A3サイズの紙、カラーペン(色鉛筆などでも可) |
- 各グループにA3サイズの紙を一枚配る
- カラーペンを一人一本選ぶ(グループ内で色が被らないようにする)
- ルールの説明をする
- グループ内で相談をしてはいけない。
- 絵の上手さを競うわけではない。絵が下手な人をからかってはいけない。
- 絵のテーマを提示する
- 「海の中」や「ジャングル」など具体的すぎず、誰でも描きやすいようなテーマを選ぶ
- 一人30秒で一本のペンを使って絵を描き、グループの次の人に回す。1人2回描いたら終了
- 各グループで描いた作品を黒板に掲示し、絵のいいところを認め合う(一番重要)
- 教師が道徳の授業をどのようにしていきたいか話す。
絵を描くことのメリット
このお絵描きをすることのメリットがいくつかあります。
- 4月に行うグループワークは学級開きとしても効果的
- 道徳で「絵を描く」という斬新さが子供たちにとって新鮮に感じる
- 1人30秒×2回し描けないため、絵の得意不得意が出づらい。また、それぞれの色の責任があるため、全員が積極的に絵を描く。
- 道徳の授業の狙いが伝わりやすい
授業開きをするということは4月に行う授業のはずです。子供達は新しいクラスで友達ができるか心配しているころです。絵を描くというグループワークは仲良くなるきっかけにもなります。30秒という短い時間ではうまく描けないことも盛り上がるポイントになりますね。
また、道徳の授業は何を目指しているのかを子供達に感覚的に理解させやすいです。(詳しくは後述)
何のために道徳の授業を行うのか、どんな授業をしていくのかを伝えるのにピッタリの授業開きとなっています。
この授業開きのねらい
この授業のねらいは大きく2つあります。
- 友達と考える良さに気付かせる
- 道徳に絶対の正解はないことに気付かせる
友達と考える良さに気付かせる
この授業開きでは、1人1本しかペンを使えないというルールが肝です。
ジャングルをテーマにしたとき、緑色しかなかったら草木しか描けません。黄色があればトラやバナナが描けます。赤があれば、火山や木の実が描けそうです。青があれば川や空が描けます。
たとえ制限時間がたくさんあって、絵の上手な子が描いたとしても1色だけではつまらない作品が出来上がってしまうでしょう。それよりもいろいろな子がいろいろな絵を描いたほうが楽しい作品が出来上がります。
実際に描きあがった絵を黒板に貼ってみると、とても面白い絵をみることができます。全体的には決してキレイな絵とはいえませんが、慌てて書いているのが面白かったり、奇跡的にきれいな絵ができていると盛り上がったりします。その偶発性が盛り上がりの秘訣です。
絵の作者が一人ではなく、複数人、しかも絵の得意不得意がバラバラだからこそおこる偶発性を意図的に起こすことができます。
私は道徳の授業もこの絵と同じだと考えています。
クラスの中に全く同じ考えの人はいません。人によって考えの色は違うけれど、たくさんの考えが集まることで新たな気付きを見つけたり、納得したりします。
一人ひとりの意見は拙いものかもしれないけど、たくさんの色の意見が集まればそれは偶発的にすばらしい考えにたどり着くことができるかもしれません。
私は道徳の授業を充実させるために必要なのは「他者の意見を受け入れる」ことだと考えています。
道徳の授業で話し合い活動をさせるとこんなグループをよく見かけます。
- ワークシートに考えを書いているのに話し合わない。
- 誰かが考えを話していても、聞いている人のリアクションがない。
- 考えを話したらそこで終わってしまい、話が広がらない。
こんな状況でグループワークをしても効果は薄いでしょう。
友達の考えから学びを深めていくというクラスの雰囲気を作り上げるのが教師の役割となります。授業開きでは、そんなたくさんの考えを広げていきたいという教師の思いを伝えましょう。
道徳に絶対の正解はないことに気付かせる
絵は主観によって評価が分かれます。
友達と絵を見合った後で「どの絵が気に入りましたか?」と質問すると、子供によって選ぶ絵が異なります。また、同じ絵を選んだ子供同士でも理由が異なります。
子供によってお気に入りの絵が異なり、お気に入りの理由が異なるように、道徳の授業でも納得する考えは子供よって異なります。
考えは人それぞれだけど、そこに優劣はなく、人によって納得する答えが違うということを子供たち気付かせます。
他の教科にはない道徳という教科の見方・考え方をおさえることで、子供たちが自信を持って考えを話せる雰囲気づくりをしましょう。
おいしいパンの食べ方を紹介しよう
次は、おいしいパンの食べ方を紹介する活動です。この活動はシンプルですが、奥が深く、教師の技量も試されるものになってきます。この授業開きが上手くいけば、道徳の授業をうまく進める力があるといっていいでしょう。
授業開きの概要
対象学年 | 全学年 |
所要時間 | 20~30分程度 |
形態 | 一斉指導 |
準備物 | 無し |
- おいしいパンの食べ方を考えさせる
- おいしいパンの食べ方を発表してもらう
- 一人の発表をどのように繋げていくかで教師の技量が問われます。
- 道徳の授業の進め方を説明する。
パンの食べ方を紹介する授業開きのメリット
- 準備がいらない
- どの児童も発表しやすいテーマで盛り上がりやすい。
- 斬新な食べ方をする子供もおり、面白さもある。
パンの食べ方は無限にあり、誰でも考えを発表しやすいテーマとなっています。
- ジャムを塗って食べる(イチゴ、ブルーベリー、マーマレードなど)
- フレンチトースト
- 焼きそばパン
- 揚げパン
- メロンパン
- ピザ
- フランスパン
定番のパンの食べ方だけでなく、アイスを載せるなど工夫をした意見が出ると話し合いが盛り上がります。
「わかるわかる」「食べたことある!」という共感する声も出れば「えー-!!」「おいしいの!?」「変なのー」という驚きの声も出てきます。このリアクションを引き出すことが一番の目的です。
この授業開きのねらい
- 友達に共感してもらうことの心地よさに気付かせる
- しゃべることが楽しい授業になることに気付かせる
友達に共感してもらうことの心地よさに気付かせる
この題材の優れているところは、どんな意見でも共感が得られやすいということです。私が実際にやったときの子供たちのやり取りを紹介します。
おいしいパンの食べ方を教えてください
メロンパンです。
(無言でうなずく)
Bさんうなずいているね。Bさんもメロンパン好きなのかな。
学校の近くのコンビニのメロンパンさくさくでおいしいです。
分かる!でもクリームが入っているやつもいいよね
Cさんもコンビニのメロンパンが好きなんだ。ほかにおいしいパンの食べ方知っている人いる?
ざっとこのようなかたちで進めていきます。
やってはいけないことは教師が共感の言葉を言うことです。教師が逐一反応してしまうと教師と発表した子供の1対1で話が完結してしまいます。30人前後のクラスメイトがいるのに1人しかしゃべらない授業は周りが退屈します。
教師はあくまで意見を引き出す司会者であり、ファシリテーターであることを心掛ける必要があります。
共感は周りのクラスメイトにさせましょう。だれでも発表したことに対して共感してもらえると嬉しくなります。
けれども、最初は共感の言葉がなかなか出てきません。教師は子供のつぶやきや反応を見つけたら「もっと詳しく教えて」「~さんも同じなんだ。どんな食べ方をするの」「~は嫌いなんだ。何なら食べられるの?」「うなずいているね。~さんもその食べ方好きなの?」などと広げていきます。
子供達にも、どんどん反応していいよ。と伝えると楽しそうにパンの食べ方について発表したり反応してくれたりします。一度波に乗ってさえしまえば、教師の手を離れて話が盛り上がっていきます。
子供同士の交流で共感したり、驚いたりすることは道徳の授業の目指す姿と重なるはずです。多面的で多角的な視点を持った授業をするには友達の考えは欠かせません。相手に注意を向ける大切さを授業開きで確認したいですね。
しゃべることが楽しい授業になることに気付かせる
この授業開きは20~30分間ひたすら子供たちがしゃべる活動となります。誰でもしゃべりやすく、たくさんの人に共感してもらえることで発表者はとても充実した気持ちになります。また、盛り上がっている授業を見ている子どもも授業を楽しんでいます。
子供の発言が多くなればなるほど、静かに見ている子も「この授業は楽しいな」と感じ、授業に意欲的に取り組むようになります。
子供がしゃべっている時間が長くなればなるほど授業は楽しくなるものだということを子供達に気付かせることが大切です。
道徳の授業は教師が長くしゃべってしまいがちです。しかし、子供からすると長々と教師の話を聞いているのは楽しくありません。理解をさせるために話をよく聞かなければならない教科もありますが、道徳の授業はテストもありませんから、教え込む必要も、長々と話す必要もありません。
気になることや共感したことなど、思いついたことをしゃべることで、授業が楽しくなるという雰囲気を教師が整えてあげるといいですね。
まとめ
以上道徳の授業開きについて2つ紹介してきました。道徳の授業を充実させるには、授業力以前に、日頃の学級経営力が試されます。子供達の対話する力が育まれていないと、多面的・多角的な議論が進まず、道徳的価値の理解を深めることができません。
授業開きで授業に対する姿勢を子供達にしっかりと伝えておくことで、1年を通してブレない授業をしていくことができます。
ぜひ、試してみてください。