【小1プロブレム】小学校入学までにできるようにすること14選【入学準備】
子供が小学校入学を控えているけど、入学までにどんなことができるようになっておいた方が良いか悩んでいませんか。
実は、小学校と保育園、幼稚園の生活は全く違い、ある程度のことは自分一人でできるようになっておかないと子供が大変な思いをしてしまいます。
実際に小学校入学後の学習環境や集団生活のルールに適応できず、個別の対応を要することでクラス全体の授業が成立しない「小1プロブレム」という問題が、全国の小学校で発生しています。
私は小学校教師として1~6年生までを経験し、入学してからの子供たちの様子を何年も見てきました。1年生の様子を見ていると、準備をしてきたことそうでない子には明らかな違いが見てとれます。新しい環境にいるだけでもストレスがかかるのに、必要な準備もしていないとなると子供たちの負担があまりにも大きくなってしまっています。
この記事では、小学校に入学するまでに準備するべき基本的なことを「学校教員の目線から」説明します。
この記事を読むことで、入学してからの学校生活を子供が安心して過ごすことができるようになります。
近年多発している小1プロブレム
小1プロブレムとは、幼稚園・保育所から小学校に入学するにあたり、新しい環境になじめず、正常な学校生活を送ることのできない状態をいいます。東京学芸大学の調査ではこのように定義されています。
入学したばかりの1年生で、集団行動がとれない、授業中座っていられない、話を聞かないなどの状態が数ヶ月継続する
このほかにも、
- 授業にもかかわらず教室を歩き回ってしまう。
- 教師の指示通りに行動することができない。
- 同じクラスの友達とうまくコミュニケーションができない。
- 自分の思い通りにいかないとき、感情をコントロールできない(ものに当たる、手を出す、暴言を吐く)
- 決められた約束を守ることができない。
このようなことが継続して行われることで、学級が正常に経営することができず、学級崩壊を招く恐れがあります。入学したての児童20~35人の面倒を担任一人で見るのもかなり大変ですが、以上のような集団行動がとれない児童が一人いるだけでも学級活動をストップさせてしまうことがあります。
全国の小学校でこのような問題が増加傾向にあります。
小1プロブレムが発生する要因
文部科学省は小1プロブレムの原因について全市町村の教育委員会に調査した結果を発表しています。
- 家庭におけるしつけが十分でない
- 児童に自分をコントロールする力が身に付いていない
- 児童の自己中心的傾向が強い
- 幼稚園・保育所が幼児を自由にさせすぎる
- 授業についてこられない児童がいる
以上の内容を踏まえて学校現場目線からはどのように見えているか説明します。
家庭におけるしつけを学校に任せている
教育基本法第十条より、子供の教育は親がするべきであると規定されています。
父母その他の保護者は,子の教育について第一義的責任を有するものであって,生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに,自立心を育成し,心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
しかし、年々、日常生活をおくるための一般的なしつけがされずに入学してくる児童が増えてきています。
- 箸を正しく持てない、使えない
- トイレにひとりで行けない
- 着替えが自分でできない、畳めない
- 集中力が低下している(授業に参加できない)
多様性を認める観点から、どのような子に配慮を求めるような動きも増えてきました。
しかし、学校現場が個別に適切な配慮を実現するのには人手や環境が圧倒的に足りていません。
小学校は幼稚園や保育所とは違い、多くの児童を担任一人で管理しなければなりません。一人一人に丁寧に対応する余裕はほとんどありません。クラスの中に基本的なしつけがされていない児童が何人もいると、教師が手に負えなくなってしまい学級崩壊を起こしてしまうこともありえます。
そのため、学級活動を妨げるような行動をする児童は教師に注意されるようになります。「叱らない教育」が理想ではありますが、実際には「叱ってでもコントロールしなければ学級が回らない」場面も少なくありません。担任が一人に時間を使ってしまえば、その間学級の児童は野放しになっています。
まずは一人一人が基本的なことができるよう家庭でしつけしておくことが、日本の学校に通わせるうえで必要になってきます。
1年生までにできるようになっておくこと10選
子供が学校になじめるよう、入学前から学習、生活、食事など、できるようになっておくと良いことを学校現場目線で紹介します。
学習に関すること
小学校から本格的な授業が始まります。45分間の授業に集中して取り組むことができるよう家庭で準備をしておくと安心です。
また、平仮名やカタカナなどの基礎的な知識は身に付けておきたいところです。スタートから躓いてしまうと、学習に対する意欲にも大きな影響が出てきます。
45分椅子に座っていられる
授業中、椅子に座っていられない児童が増えてきています。授業中に立ち歩いたり、椅子から落ちるようなことがあれば担任に注意されてしまいます。一人の行動を許してしまえば、周りの子も真似してしまい、学級経営が成り立たなくなってしまうからです。
4月は45分間ずっと座っている授業はほとんどありませんが、慣れておくに越したことはありません。遊びながらでいいから45分椅子に座っていられるよう家庭で練習してみましょう。
ひらがなが読めるようになる(書ける)
- ひらがなが読める
- 自分の名前を鉛筆で書ける
ひらがなは全員読めるという前提で授業が進んでいきます。ひらがなが読めないと、黒板に書かれた指示も理解できませんから、大変な思いをしてしまいます。当然、理解できなければ授業に集中できなくなるため立ち歩くなどの行動を起こしてしまいます。
また、自分の名前は鉛筆で書けるように練習する必要があります。提出するプリントには必ず記名をしなければならないからです。同じクラスの子でも読めるような字で書けるよう鉛筆の持ち方から教えてあげると親切です。
4~5月は授業でひらがなの練習をドリルなどを使って練習しますが、あっという間に終わってしまいます。できれば50音すべて書けておいたほうが子供は安心して授業に臨めます。
入学して早々できないことが連続すると、学習への意欲が低下し、悪循環に陥ってしまいます。「ひらがななんて簡単じゃん」というくらいが丁度いいです。あらかじめ家庭で平仮名を理解したうえで、学校で丁寧な書き方を習うということをオススメしています。
平仮名は入学前から50音全て書けると、かなり安心して学習に取り組めます。
数の概念に慣れる
1年生の算数でつまづくポイント1つ目が「10より大きい数」です。
十の位の概念が曖昧だと、1+4=14 というような計算を平気でしてしまいます。1~100までは自分で数えられるようになると、数の概念が身に付き、計算問題もスムーズに解けるようになります。
お風呂の中で100数える、一緒にお菓子の買い物をするなど、数を数えるような機会を日ごろから作ると、子供は感覚的に理解するようになります。
アナログ時計が読めるようになる
1年生の算数で一番のつまづきポイントの一つである「時計の読み方」です。
デジタル時計が普及してきたことにより、アナログ時計を読めない子が増えてきています。教室には基本的にアナログ時計が設置されています。時計の見方は授業でも習いますが、たった数時間の授業で時計を読めるようにはなりません。
小学校では、休み時間がいつまでか、授業開始の時間はいつからかなど、時間を意識することが多いため、あらかじめ時計の読み方を身に付けておいて損はありません。
家庭でアナログ時計を準備しておき、「今、何時何分か分かる?」と普段から時計の読み方を学習しておくことがオススメです。3年生になっても時間の問題を間違える子は多いです。
学校生活に関すること
家庭での生活の仕方が学校生活に直接反映されます。小学校では、ほとんどのことを自分でできるようになっておく必要があります。
自分で片付けができるようになっておく
普段からおもちゃなどで遊んだ後は自分で後片付けができるようにしておきましょう。入学した次の日から片付けは自分一人でするようになります。
片付けの時間は児童によって大きく差がでます。家庭で片づける習慣を身に付けさせておかないと周りの子から大きく遅れてしまいます。
片づけを経験していない子は決まった場所に戻すということができません。そのため、ぐちゃぐちゃにプリントなどを机の中やランドセルにしまってしまい、大事なお便りが家に届かない恐れがあります。
また、片付けができない子は常に机上が散らかっているため、よく物を落とし、無くします。
片づけるということは実は手先の器用さも多少関係します。プリントをファイルに入れてしまうことができず、破れてしまったり、算数ブロックをもとのケースに並べてしまえなかったりと手先の不器用さから物をしまえない子は珍しくありません。
おもちゃで遊ぶ時間よりもタブレットで動画を見たり、ゲームをしたりする子が増えてきました。手先の器用さを育てる機会を意図的に作らないと、子供が学校で困る思いをしてしまいます。
トイレに一人で行ける(和式も)
古い学校だと、和式便所しかないようなところもあります。和式便所でも用を足せるよう家庭で練習しておきましょう。
また、男の子の場合、ズボンを全部下さずに小便器で用を足せるようにしておきましょう。お尻が丸見えの状態で用を足していると、周りの子からからかわれる事がよくあります。もちろん、友達をからかわないよう担任が指導しますが、練習しておくに越したことはありません。
一人で着替えができる
体操着と私服にスムーズに着替えられるようにしておきます。着るのは大丈夫ですが、問題は脱いだ後です。
脱いだ服を一つ一つ畳んで体操着袋に入れなくてはなりません。学校でも指導しますが、日頃から洗濯物を一緒に畳むなどしてあげるといいですね。小学校は時間に追われることも多いため、キレイに畳めないとごちゃごちゃに入れる癖がついてしまいます。
髪を自分で結べるようにする。
体育や給食着に着替えるときは、長い髪を自分で結ばなくてはなりません。特に、女の子は七五三に備えて長く伸ばしている傾向にあります。自分一人で縛れるよう練習させておきましょう。
結ぶのができない子は先生にお願いしてくるのですが、担任が男性の場合、1年生であっても女の子の髪や体に触るようなことを避けているため、かなり困ります。いちいち他の女性教員を呼ぶ余裕もないため、自分一人でできるようにしておきましょう。
社会性に関すること
小学校では、幼稚園や保育所と違い、最低限の社会性が求められます。集団行動がとれないと全体の流れについていけず、孤立してしまいがちです。
どんな子でも一人ひとり丁寧にフォローしてほしいというのが親の気持ちですが、現在の学校現場にそれを求めるのは厳しい現実があります。
挨拶や返事ができるようにする。
挨拶や返事をすることは、社会生活を送るうえで必須になるものです。特に「返事」ができないと、円滑なコミュニケーションをとることができません。
「返事」というのは、「はい」と返すことだけではありません。
分からなかったら「分かりません」、困ったら「どうすればいいですか」など、自分の意思表示をすることが返事です。
困ったことがあったり、分からないことがあったときに「親に代わりに言ってもらう」が当たり前になってしまうと、学校生活を円滑に進めることができません。
困ったときに助けを求められるようにする
自分が困ったときに、担任や近くの大人に助けを求められるようになっておくとかなり安心です。1年生では少し難しいかもしれませんが、これができるとできないではかなり違います。
新しい学校生活では、慣れないことばかりでどうすれば良いか悩むことが多々あります。
実際、私が担任したクラスでパンの袋を開けられず、結局食べられなかったという悩みを保護者からの電話で発覚したことがあります。
バタバタしていて子供が困っているのを見つけられなかった私の責任でもありますが、一言「パンの袋が開けられません」といってくれるとすぐに開けることができました。
困ったとき、自分の口から助けを求められるよう、日頃から意識しておく必要があります。親が手取り足取り子供を助けてしまうと、それが習慣になってしまい、自分から話さなくなってしまいます。
困ったことがあれば、自分から話すよう練習してみるのもいいですね。
給食に関すること
給食が原因で学校に行きたくないという子供が毎年何人かいます。給食への苦手意識を減らすために、家庭で準備することは3つあります。
給食で出てくる料理に慣れておく
- 味がついていない白いご飯
- トーストされていない食パン
- 和食(特に魚)
- 牛乳
特にこの4つは食べられるようにしておきましょう。ごはんと食パンは頻出メニューのため、食べられないとお腹を空かせてしまいます。
また、給食は食育のために和食が多く出ます。魚料理を出す家庭が少なくなってきたこともあり、魚嫌いの子供が増えてきました。魚や豆類などはいつも残ってしまいます。
給食の時間が苦痛にならないよう、家庭でも食べる機会を設け、苦手意識を作らないようにできるといいですね。
袋を空けたり、皮をむいたりできるようにする。
- 個包装されているもの
- パンの袋
- ヨーグルトやゼリーの蓋
- みかんの皮
以上のものを自分で開けたり、むいたりできるようにしておきましょう。
特にパンの袋を開けられないお子さんが多いです。破るのではなく、開いてあけられるように練習しておきましょう。
小学校のパンの袋は開けやすいようにきつく糊付けされていません。開き方のコツさえわかれば力が無くても大丈夫です。
20分~30分程度で食べきれるようにする。
小学校の給食時間は長くありません。1年生の最初は多めに時間をとりますが、だんだん食べる時間が短くなってきます。
最終的には20分~30分程度になります。家庭でゆっくり食べているのが習慣化されていると、全部食べきれないこともあります。
時間内に食べられるよう、家庭でも練習できると安心です。
まとめ
小学校の入学式を迎える子供たちは不安と緊張でいっぱいです。
新しい環境で新しいことを学ぶことは大人が思っている以上にストレスがかかるものです。せめて最低限の準備を家庭で進めておくことで安心して学校生活を送ることができます。
素敵な小学校生活を送ることができることを願っています。