【小学校高学年】社会が好きになる!楽しいゲームを紹介!【貿易ゲーム】
- 社会科は覚えさせることが多くて大変。
- なかなか面白い授業ができない。
- 子供が退屈して社会を嫌ってしまう。
- 社会の授業は難しいから苦手。
と悩んでいませんか?
社会科を楽しく授業するって結構難しいですよね。
まず、社会科が面白くないと感じてしまう理由は以下の3つが挙げられます。
- 暗記することが多くて大変
- なぜ勉強するのかが分からない。問題意識を持てない。
- 面白い活動が少ない(実験や討論会などがない)
楽しく勉強するためには今あげた3つを改善する必要があります。
それらを解決するために効果的なのが今回ご紹介する貿易ゲームです。
貿易ゲームは、ゲーム性がありながらも、社会を疑似体験でき、学びの多い活動です。
私は、この「貿易ゲーム」を通して子どもたちがどんどん意欲的に学んでいくのを何度も目の当たりにしてきました。
この記事では「貿易ゲーム」のやり方とその準備について教えます。
記事を読めば、誰でも楽しく、学びのある社会の授業が出来ます。
ぜひ、最後まで見てください!
貿易ゲームのルール
貿易ゲームはいくつかのグループ(仮想の国家)に分かれ、できるだけ多くお金を集めることができるか競うゲームです。
それぞれの国家には、それぞれ紙(資源)やはさみなどの道具(技術)が配られます。
その資源と技術を用いて商品を作成し、世界銀行に売却することでお金を稼ぐことができます。
お金を稼ぐという目的のために子供たちは、試行錯誤し、様々な問題に直面することとなります。
その問題について考えることが、そのまま社会の学習に繋がり、学習への意欲を高めることができます。
支給された物資を使って商品を作りお金を稼ぐ
貿易ゲームでは、グループごとに仮想の国を設定します。
国ごとに紙(資源)や道具(技術)が配られます。
それらを使って商品を作成し、世界銀行に売ることでお金を稼ぎます。
世界銀行はどの国にも所属しない中立の立場です。子供たちの中から募集し、お願いしましょう。
商品は担任があらかじめ黒板に掲示しておきます。
- 一辺が5cmの正三角形
- 半径が3cmの円
- 長さが不明な半円(分度器の大きさ)
指定した長さや形を十分に満たしていない場合は商品としての価値がなく、ただのゴミになってしまいます。
制限時間の中でいかに早く、丁寧に商品を作りお金をたくさん稼げるかを競います。
しかし、うまくいかなくなってくると支給された物資以外を勝手に使って商品を作り始める子供が出てきます。
あらかじめ禁止のルールを明示することが大切です。
- 支給された道具以外を使ってはいけない
- 単独行動をしてはいけない。必ずグループで協力すること。役割分担をする場合は誰が何をしているのかを全員が把握すること。(個人が自由に行動すると学習効果が薄れるため)
- 他のグループから道具を盗むなど、非常識な行動をしない。
基本的には禁止行為だけを伝えるだけに留め、どうすればたくさんお金を稼げるかは教師側からは伝えません。
また、このゲームは社会を実感するために、不平等さを感じるようにできています。
具体的には決められた国によってあらかじめ支給される紙や道具の量が異なります。
- 発展途上国
- 紙(資源)は豊富にあるが道具(技術)が無い。
- 指定された商品を作成するためにはハサミで切ったり、定規で長さを測る必要がある。他国と貿易をして道具を調達しなければならない
- 新興国
- 紙(資源)がそれなりにあり、道具(技術)が少しだけある。
- 発展途上国同様商品を作成することができないため、道具を求め貿易をする必要がある。
- 先進国
- 紙(資源)が少ないが、道具(技術)が豊富にある。
- 商品を作成するうえで必要なハサミや定規、コンパスなどが豊富にそろっている。他国と貿易をして資源を集める必要がある。
商品を作りたいのに作れない状況に子供たちは困惑し、自然と話し合いが始まります。
分からないことは教師に個別で質問させる。
時間が経つにつれ、自分のグループにはないものが他のグループにはあることに気付くようになります。
次第に子供から
他のグループと物資の交換をしてもいいですか。
と質問が来るようになります。
全体には回答をせず、質問をしてきた子供に対して回答をするようにしてください。
このゲームの仕組みに気付いたグループからどんどん商品を作成し始めます。
すると、周りのグループをそれを真似し始め、最初は何もできず困惑していた子供たちが他のグループと活発に貿易をするようになります。
- 物々交換
- 貿易(金銭のやりとり)
- 他国と同盟を結ぶ(カルテルなどが生まれる可能性あり)
- 偽商品を他国に売りつける
- ギャンブル(じゃんけんで買った方が資源をもらうなど)
- 人材のレンタル(出稼ぎ)
- 情報の売買
- 金銭の貸し借り
小学生では物々交換や貿易が中心となりますが、稀に思いもつかないような行動をとる子供も出てきます。(大体うまくいきませんが・・・)
不定期に商品に付加価値を設けるイベントを発生させる
貿易の仕組みに気付き始めると、ひたすらに商品を作ることに執着し、作業の時間が中心となります。
考えることを増やすために、状況を見ながら教師がイベントを発生させます。
- 赤いシールが貼ってある商品は2倍の値段で売れるようになる
- 正三角形は3倍の値段で売れるようになる。
- 円は2分の1の値段で売れるようになる。
- 赤い紙(新資源)を世界銀行が販売。赤い紙でできた商品は5倍の値段で買い取ってもらえる。
ゲームを進めていくと作成しやすい図形がたくさん作られるようになります。供給の多い図形の値段を下げ、供給の少ない図形の値段を上げることでゲームにメリハリが生まれます。
これは経済の基本であり、小学校で学ぶ範囲からはそれていますが、社会を知るうえでは必要不可欠な知識となります。
学習する単元に合わせたルールを提示する。
貿易ゲームに慣れてくるとゲームとしての攻略に目が行くようになってきます。
しかし、子供達には新しい問題を与え続けることが大切です。
環境に関する単元を取り扱う場合
基本的なルールは先ほど説明したものと一緒です。
環境に関する単元を学習するときは一つだけルールに工夫を加えます。
このルールだけ子供たちに守らせます。
そして貿易ゲームが終わった後に教師が子供たちに語り掛けます。
どの国も商品をたくさん作って、たくさんお金を稼げましたね。
しかし、袋にはたくさんのゴミがありますね。そのゴミを処分するために、ゴミの重さだけお金を支払ってもらいます。
商品をたくさん作っているグループほどたくさんのゴミが集まっているため、残念がる子供がたくさん出てきます。
そんなの聞いてないよ。
お金が稼げる円(図形)をたくさん作ったからいっぱいゴミが余っちゃった。
そこで環境について意識を向けさせます。
皆さんはお金を稼ぐために、なるべく高く売れるような商品を作り、ゴミが生まれることを全く気にしませんでした。それは、ゴミが生まれることよりもお金を増やすことに集中していたからです。
みなさんが生み出したゴミは、ゴミ箱に捨てれば全て解決だと思ってはいなかったでしょうか。ゴミをたくさん出すことは良いことなのでしょうか。
床に紙のゴミが落ちていますね。商品にならないからといってゴミを拾わずに一心不乱にお金を稼いでいませんでしたか。
誰かがゴミを拾ってくれるからいいや。と無意識に思っていませんでしたか。
私たちの住む現実の世界も同じようなことは起こっていないでしょうか。
教科書で学ぶ社会はどこか他人事のように感じている子供達が多いです。
社会の問題は「工場から排水を流す悪い人たち」のせいにして、自分事として問題を捉えずらい傾向にあります。
自分たちがお金を生み出す側になって初めて環境問題の難しさに直面することができます。
環境やSDGsについての単元に入る前にこのような問題提起をすることで、単元への興味関心をぐっと深めることができます。
食糧生産に関する単元
5年生の食糧生産とも関係させることも可能です。
基本的なルールに一つだけ新たなルールを追加します。
貿易ゲームに食料の要素を付け足します。
当然、資源と同様に国によって食料の豊富さが異なります。
食料の種類はクラスの実態や目的に応じて柔軟に決めます。
- 食料カード
- 食料をカードにしてあらかじめ国に配っておく。銀行や他の国から食糧を購入することができるようにする。
- 色紙で指定した形に加工したものを食料とする。
- 食料を生産するところから考える。色紙を加工し、指定された形に切る作業が追加される。
担任がどこに問題意識を持たせたいかによってルールが変わってきます。
「フードロス」に目を向けさせたい場合は、色紙を食材として扱い、加工することで食料にできるようルールを設定します。
その際一度でも加工した場合、賞味期限が発生することを伝えましょう。万が一のことを考え、必要以上に食料をため込むと大量に余らせてしまうことも考えられます。
「食料自給率の低下」に問題意識を持たせたい場合は、流通する食料の総量を減らします。また、天災などを設け、一方的に食料を減らすことも考えられます。
途中まで貿易に協力的だった食料自給率の高い国も天災によって、自国を優先するようになると、食料自給率を高めることの大切さを実感します。
貿易ゲームのねらいや考え方
大まかなルールを確認したうえで、この貿易ゲームをすることでどんなメリットがあるかについて説明していきます。
貿易ゲームは社会の構造を楽しみながら実感できる
教科書に書かれていることをひたすらに覚えることは、子供にとっては苦痛です。
ポケモンの名前や好きなアイドルの曲を覚えることには必死になるのに、勉強になると急にやる気がなくなるのは興味が持てないからです。
特に社会科は興味を持てなければ、全く頭に内容が入ってこない教科の代表格でもあります。
【お金を稼ぐ】というシンプルで分かりやすいルールが子供の意欲を高め、そこから生まれる疑問や問題が学習に繋がります。
実際、私が高学年を担任した時は貿易ゲームをしていましたが、子供たちの評判はとても良かったです。
うまく仕組みを理解できない子供も中にはでてきますが、グループ内でうまく役割分担をすることで全員が活躍できるのもポイントです。
授業でありながら、学級経営にもつながってきます。
ゲームが終わった後の振り返りが大切
ゲームをしていく中で、うまくいかないグループも出てきます。
ゲームをしたあと、子供たちに感想を聞くと否定的な意見が出てくることもあります。
自分の国は発展途上国で、最後まで道具が手に入らなくてつまらなかった。
Bくんのグループは最初から資源が豊富にあってずるい。
「他の国はズルい」という不平等さを体感できることも大切です。
社会は全てがきれいごとではありません。不平等な状況があるからこそ、問題が生まれます。
貿易ゲームで勝つことが全てではありません。
貿易ゲームの過程でどんな問題が生まれたのか、それらの問題をどう解決すれば良いのかを考えることが大切です。
貿易ゲームをした後は、必ず振り返りをする場面を設けましょう。自分の国だけではなく、他国ではどのような状況だったのかを聞くことが大切です。
もし、時間に余裕があれば同じルールで2回目をやることも効果的です。
反省を踏まえて行動することは、自ら学んだ知識をゲームに生かそうとする「主体的に学習に取り組む態度」に繋がります。
社会科の様々な単元に応用できる。
この貿易ゲームが優れているのはただゲームとして楽しいだけでなく、社会の様々な単元と結び付けることができる点です。
今回は貿易、環境、食糧生産の例をご紹介しましたが、ルールをアレンジすることで様々な単元に応用することができます。
例えば、6年生の歴史の授業でも使えます。貿易ゲームの食料を米と肉に設定することで、弥生時代に米が流通した理由がよく分かるようになるはずです。
食料の確保が不安定な肉よりも、安定して取れる米のほうがゲームを有利に進めることができるからです。
貿易ゲームは単元が始まる前か終わった後に実施することをオススメします。
単元が始まる前であれば、貿易ゲームをすることで子供たちが自ら学習問題を立てやすくなることでしょう。
テーマに沿った学習問題を立ることができているか、「主体的に学習に取り組む態度」の観点を評価しやすくなります。
単元が終わった後であれば、学んだ知識を生かして貿易ゲームに取り組むことができます。
貿易ゲームの振り帰りをノートに書かせると、学んだ知識を生かせたかどうか、自分の学び方はどうだったかなど、より具体的に書けるようになるはずです。
まとめ
以上、貿易ゲームについての説明でした。
社会の授業を楽しいと思ってもらうためには、いかに学習内容に興味を持ってもらうかが大切だと感じています。
社会科の専門家からすれば、この方法は適切ではないと断言されてしまうかもしれませんが、私はこの方法で社会が好きになった子供たちをたくさん見てきました。
ぜひ、一度試してみてはいかかでしょうか?