【通知表の裏事情】学習の様子 3つの観点の正しい見方を分かりやすく説明
学期の終わりにもらう通知表、学習の成績が全てではないといっても子供の成績は気になりますよね。「もう少し」がいくつかあったり、「できました」が多くて「大変よくできました」が少なかったりすると大丈夫かと心配になっていませんか。
私が小学校のころはもっといい評価だったのになぁ
と感じている方がいるかもしれません。
実は今の小学校の評価方法は親世代とはかなり違います。今の子供達は昔と比べると相当難しいことを要求されており、評価が厳しくなっています。
また、評価方法も難しくなってきており、実は学校側でもどのように評価するかいまだに悩むことが多くあります。実際担任によって解釈が変わり、評価の基準が分かれてしまう部分もあります。
私は小学校教師として低・中・高と様々な学年を担任し、数百人の児童の評価を付けてきました。教員同士でも何度もどのように評価するべきか議論を重ねた経験もあります。
この記事では、学習の様子の正しい見方について学校の裏事情も踏まえて説明していきます。きれいごとではなく、本当の学校現場の現状をなるべく分かりやすい言葉で解説します。
この記事を読むことで、通知表をどのように見ればいいのか分かるようになります。成績に一喜一憂することなく、正しい判断ができるようになります。
ぜひ最後までご覧ください!
- 通知表の評価は実際の評価ではないことがある。
- 周りの子や過去の成績と比べてはいけない。
- 各教科3段階、3つの観点で評価している。
小学校はA・B・Cの三段階評価
小学校は基本的にABCの3段階で評価をします。
項目に決まりはありませんが、ほとんどの学校は「大変よくできました」「よくできました」「もう少しがんばりましょう」が多いかと思います。
評価の目安
- 大変よくできました(A):90~100点以上(全体の20%前後)
- よくできました(B):60~90点(ほとんどがここに該当する)
- もう少し頑張りましょう(C):60点未満(全体の10%前後)
あくまでこの目安は記事を作成した管理人が今までの経験から述べているだけであり、明確な基準があるわけではありません。自治体や学校、学年によってもこの基準が変わってきます。
教科によっては担任で評価の基準が変わることも
教科によって担任のABCの評価の基準が変わることはめずらしくありません。担任の主観が影響しやすいかどうかの違いがあります。
- 国語
- 算数
- 社会
- 理科
国語や社会、理科などはペーパーテストの点数を中心に評価を付けます。特に算数は答えがあっているかどうかがはっきりと出る教科です。「できたかどうか」が分かりやすいため主観が入りづらく、評価のブレが少ないです。
- 図工
- 音楽
- 体育
- 家庭科
一方で図工や音楽、体育などはペーパーテストを実施する機会がほとんど無いため、学習の様子をメインに評価をつけます。ワークシートに考えを書かせたり、実演させたりと担任によって評価方法も変わり、主観による評価の割合が大きくなりやすいです。
特に図工は絵や工作物に対して評価することの難しさがあります。作品のうまい下手だけでなく、その子の思いも踏まえるとなると担任によって評価が分かれてしまいがちです。
担任の性格や考え方でも評価が変わる
すべて数値で表せない以上、担任の性格や考え方によって評価が変わってしまうことは十分にありえます。
真面目な担任ほど評価が低くなる可能性が高い
なぜなら文部科学省が出している学習指導要領というものがかなり高度なレベルを要求しているからです。
6年生算数図形の学習ではこのような評価をするようになっています。
図形を構成する要素及び図形間の関係に着目し,構成の仕方を考察したり
図形の性質を見いだしたりするとともに,その性質を基に既習の図形を捉え
直したり日常生活に生かしたりすること
ただテストで100点をとるだけでなく、様々な学習活動を通して「進んで生活に生かそうとする態度が育成」されなければAがつかないということです。
ほとんどの子供は答えを出すことまではできますが、生活に生かそうとする態度となると急に難しくなります。教師の働きかけによって見た目上はできたように見えますが、実際に評価を付けるとなると厳しい評価になります。
ベテラン教師だと甘い傾向にある・・・?
これもあくまで感覚ですが、ベテラン教師は評価が甘い傾向があるように感じます。もちろん厳しくつける先生もいますが、私がこのように考える理由は、
学習指導要領は文部科学省によって10年ごとに改訂されます。教師はこの学習指導要領の内容を踏まえた授業をしなければなりません。
若手~中堅あたりは必要に応じて学習指導要領を読んで授業の内容が適切か検討するタイミングがあるのですが、ベテランの先生はこれまで培ってきた経験と感覚で考える方が多いため、昔の評価基準で評価する方が中にはいます。
もちろん、勉強熱心で常に確認している人もいますが、全体的にみると読んでいない方が多い印象があります。
通知表に書かれている評価は実際の評価ではない
教員はテストの点数やワークシート、ノートの記述などから評価をします。
しかし、通知表に記載されている評価は実際の評価とは異なることがあります。あくまで通知表は学校からのサービスであって本当の評価を記入する必要が無いからです。本来の正しい評価は「指導要録」に記載され、進学先に引き継がれます。
それでは、なぜ通知表に本当の評価を記入しないのか。それにはいくつかの事情があります。
- 学校全体の学力を考慮している。
- 苦情対策
- 子供にショックを与えないようにするため
これらについて説明していきます。
学校全体の学力を考慮している
本来は全国一律の基準で評価をするべきですが、通知表上は違います。どうしても学校の地域によって学力差というものは発生します。
例えば中学受験を受ける児童が多い地域と、そうでない地域とでは全体的な学力に大きな差が生まれます。それらを考慮せずに全く同じ基準で評価すると、学力が低い地域では、ほとんどの児童がBもしくはCを付けるということになってしまいます。そうなると学校内でのバランスが悪くなってしまうため、クラス内上位20%程度をAにすることが多いです。
都会の進学校と地方の普通の学校でA評価の意味合いが変わってきてしまいます。本来であればよくないのですが、評価のバランスが偏っていると苦情が発生しやすくなり、未然に防いでいる一面もあるかと思われます。
苦情対策
通知表はサービスのため、真実を記入する必要はありません。評価を低くつければそれだけ苦情の連絡が来る可能性が高くなります。教員は評価を付けるのに十分な理由を持っていますが、苦情の連絡をする親にどんなに誠実に理由を説明しても納得してもらえることの方が少ないです。
評価を低くつけることで苦情が来る可能性が増えるなら、そもそも低い評価を付けなければよい話です。特に苦情が多い保護者だと事前に分かっている場合はかなり慎重になります。
CかBで迷うくらいならB。Cを付けるとしたら明らかに勉強ができず、誰が見ても同じ意見になる場合に限ります。
通知表を配った日は、職員室に電話がかかってくると教員は皆ヒヤヒヤしています。「評価の苦情だったらどうしよう」とかなり神経質になるのは教員あるあるです。
子供にショックを与えないようにするため
評価を付けていくうえで、どの教科でもAを一つも付けられないような子供は何人かいます。そのような子供は学力、運動、芸術などどの観点で見てもAは付けられずオールBになってしまいます。
中学校に引き渡す「指導要録」にはオールBでも記入しますが、通知表にはそのまま記入することは滅多にありません。通知表を受け取った子供が、
私っていいところ一つもないんだ・・・
と気落ちしてしまうかもしれないからです。子供の良いところを認め、伸ばしていくことも通知表の役割です。全体としてオールBのまま子供に見せることは避ける傾向にあります。
そこで少しでも子供の良いところを褒めてあげるために、何とかしてAになる教科を考えます。ここで選ばれやすい教科は図工、体育、音楽などです。
国語や算数はテストの点数で数値化されてしまっているため、さすがにAを付けてしまうと理由を説明することが困難になってしまいます。しかし、図工や体育などの実技教科は教師の主観によるところも大きいためそこで何とかAを付けてあげることがあります。
周りの子や過去の成績と比べてはいけない
これまでに説明したように通知表の成績が全て正しい評価をしているとは限りません。つまり、そのような通知表を周りの子と比べたり、前の学年の成績と比べたりすることは適切ではないことが分かります。
低い評価を付けられたとしても、それは前の担任が優しすぎただけかもしれませんし、今の担任が平均よりも厳格に評価しているのかもしれません。担任や学校の事情など様々な要因が絡んでいる以上、他者と「比べる」ということをしてはいけません。
比較するのではなく、今の担任がどのように評価したのかを受け止め、あくまで「参考」にすることが大切です。
本当の成績や学力を知りたければ、日頃持って帰ってくるペーパーテストの結果を集計し、平均を出すことも一つの手です。小学校が採用している業者のテストはかなり基礎基本を重視した内容になっているため、90~95%を超えていればA相当と言えるでしょう。(あくまで参考程度です)
C評価がついたら要改善
苦情が来ないように、本来の評価より上げることがあると説明してきましたが、逆に本来の評価より下げるということは基本的にありません。下げるメリットが誰にも無いからです。
そのような状況でC評価がつくということはかなり学習の遅れがかなりあるということを認識する必要があります。通知表では「もう少し」は児童に配慮した表現で、正しく言えば「学習が遅れている、理解が不十分である」という意味です。
評価の一つ一つに悲観しすぎることはありませんが、問題意識を持っておく必要はあります。
3つの観点から学習の評価をする
評価は文部科学省から出される「学習指導要領」を基に行われます。学習指導要領は10年おきに改定され、直近の小学校の改定は2020年に行われています。
2020年の改定の特徴は、全ての教科を3観点で評価するということです。観点の名称も「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」」に統一されました。全校どの学校でもこの3観点に基づいた評価をしています。
2020年以前 | 2020年以降 |
---|---|
関心・意欲・態度 | 知識・技能 |
話す・聞く能力 | 思考・判断・表現 |
書く能力 | 主体的に学習に取り組む態度 |
読む能力 | |
知識・理解・技能 |
観点が5つから3つに減っています。評価の観点が減れば、1つの観点に求められるレベルが高くならざるを得ないため、評価が厳しくなります。
2020年以前 | 2020年以降 |
---|---|
関心・意欲・態度 | 知識・技能 |
思考・判断・表現 | 思考・判断・表現 |
技能 | 主体的に学習に取り組む態度 |
知識・理解 |
国語以外の教科はすべて観点が4つから3つに減っているため、全体的に評価が厳しくなっています。
ここから3つの観点について簡単に説明します。今から説明する内容はあくまで分かりやすさを優先しており、厳密には正しくない表現もあります。しかし、それを一つ一つ説明すると非常に読みづらくなってしまうため、あらかじめご了承ください。
知識・技能
具体的に各教科でどのように評価しているかを例示しながら説明していきます。
- 漢字が正確に読める・書ける(国語)
- 計算問題を正確に解ける(算数)
- 都道府県を正しく覚えている(社会)
- 曲の特徴(リズムや曲想など)について理解している(音楽)
- 跳び箱をきれいに跳ぶことができる(体育)
- 筆の使い方を工夫して絵を描くことができる(図工)
- リコーダーを正しいリズムできれいに演奏できる(音楽)
- 正しい包丁の使い方で調理ができる(家庭)
知識・技能は簡単に言えば「基礎・基本」です。ペーパーテストや実技テストなどの点数を中心に考えます。学習内容の「理解」や「気付き」「達成度」を評価します。
思考・判断・表現
- 物語の登場人物の気持ちを想像する(国語)
- どんな絵を描こうかと頭のなかで思い描く(図工)
- 歴史上の出来事に対して人々の関係や地理的要因、時代の変化など様々な要因を結び付けて考える(社会)
- 自分のフォームの課題を見つけ、改善のための方法・練習を考える(体育)
- 音楽の特徴から、どの楽器が演奏するのに適しているか考える(音楽)
- 社会の問題に対して自分たちができることを選択、判断する(社会)
- 図形の面積の求め方を式や図を使いながら分かりやすく説明する(算数)
- 自分の好きなものについてのスピーチを相手に分かりやすく発表する(国語)
- 歴史上の人物について時代背景を抑えた新聞を作成する(社会)
思考・判断・表現は簡単に言えば「応用」です。課題に対して頭で考え、判断し、それを何らかの方法で発表します。問題解決能力が試されるため、知識・技能に比べてAがとりづらくなっています。
どんなに運動神経がよくても、技のポイントを説明できなかったり、自分の課題を見つけ、練習方法をどう解決すればよいか考えられなかったりするとAはつきません。
頭を使い、さらにそれを言葉で説明することが求められます。言葉で説明する力が足りないとすべての教科でAをとるのが難しくなってしまいます。
主体的に学習に取り組む態度
主体的に学習に取り組む態度は、「粘り強く取り組む」「自らの学習を調整しようとする」の2つの側面があります。
- 掛け算九九を覚えるため何度も何度もあきらめずに練習する(算数)
- 実験結果を予想し、実験を何度も繰り返し検証する(理科)
- グループで何度も試行錯誤しながらオリジナルの音楽をつくる(音楽)
- 単元の最初に学習の見通しを持つ。(めあて)
- 運動を始める前に今日の学習で何ができるようになるか目標を持つ(体育)
- 単元の最後に自分の学習が上手くいったか振り返る。良くても悪くてもその原因を考え、次の学習に生かそうとしている。
- 台上前転ができなかった理由は目線の位置が悪かったことに気付き、次回は目線を体に向けるよう意識している(体育)
- 開脚とびができた理由は手をつく位置が跳び箱の奥についていたからだということに気付き、他の技でも奥に手をつくように意識づけている(体育)
「主体的に学習に取り組む態度」は簡単に言えば子供の「やる気」「学習する力」を評価します。ペーパーテストの結果ではなく、児童の内面に着目しています。
「粘り強く取り組む」は比較的分かりやすい評価です。目標を達成するために何度も何度も繰り返し取り組んでいるか、児童の態度を見とります。一生懸命に頑張る「やる気」があれば良い評価につながりやすいです。
しかし、「自らの学習を調整しようとする」がかなり難しくなってきます。ただ頑張るだけでなく、
- 適切な目標を立てる(少数のたし算を正確に解こう)
- 俯瞰しながら学習をする(小数点を忘れがちだから気を付けよう)
- 自分の学び方を振り返る(友達の考えを聞いたら理解が深まった。次からは位をそろえて計算することに気を付けよう)
というように、自分で学習を進めていく力が求められます。教師から出された課題に対して一生懸命に取り組むだけでは主体的に学習に取り組む態度のA評価はもらえません。自分で学習の計画と振り返りを完璧にできる小学生はかなり限られています。Bが普通でAは相当優れているといっていいでしょう。
逆に言えば、教師の主観によって無理やりAにできなくもありません。(本当はダメですが)
まとめ
今回は通知表「学習の様子」の見方について説明してきました。
- 通知表の学習の評価は実際の評価とは限らないため、あくまで参考程度にすること
- 周りや過去の成績と「比べる」ことはあまり意味がない。
- 3つの観点は簡単にいうと「基礎基本」「応用」「やる気、学び方」
通知表の成績のみを見て一喜一憂するのではなく、普段から学校から持って帰って来たプリントやノートを見たり、学習の様子を聞いたりすることで子供の良いところを褒め、悪いところをどのように改善するか話し合うことが大切です。
通知表を正しく見て、お子さんの良いところをたくさん褒められるといいですね!